雨乞祝詞あまごひののりと

掛巻かけまくかしこその大神おほかみ廣前ひろまへまうさく。今年ことしはるはじめより安麻美豆あまみづつき降零ふれれば、天下あめのした公民おほんたから取作とりつくれる奥津おうつ御歳みとし豊年とよとしなしさいはひたまはんとうれしみよろこびしに、頃日このごろ炎旱日ひでりひて、百姓おほんたから田作たつくり穀物たなつものはじめくさ片葉かたはいたるまでかれなえるがゆへに、今日けふ生日いくひ足日たるひ朝日あさひ豊榮登とよさかのぼりに、禮代いやじろ幣帛みてぐら由紀ゆき御酒みき御贄みにえ横山よこやまごと置足おきたらはして、由志理ゆしり伊都志理持いじしりもち齋麻波里ゆまはり淸麻波利きよまはり祈禱たいのりまうことよしたいらけくやすらけく聞食きこしめして、たちまち天津御空あまつみそら多奈雲入たなくもり天津美津古あまつみづこ保須我ほすがごとふりて、大神等おほかみたち敷座しきま山山やまやまくちより狭久那多利さくなだりくだしたまみづを、甘水あまみづ美水うつのみづ大御田おほみたうけて、五穀いつくさのたなつものあき垂穗たりほ八握穗やつらほ佐加さかへしめなしさきはへたまはば、初穗はつほをばしるにもかひにも八百稻やおしね千稻ちしね引居ひきすゑおきて、あきまつり遠御膳とうみけ長御膳ながみけ赤丹あかに神頴かんかび聞食きこしめせと、言祝ことほぎまつる吉事よごと頸根衝うるねづき拔烏呂餓美すきをろがみ稱辭竟奉ただへごとをへまつるおそれおそれみもまうす。
辭別ことわけまうさく。今日けふうごなはりはんべ神主かうなし祝部はぶりはじめ刀稱とね男女をとこをみないたるまで咎過とがあやまちあるをば神直備かんなをび大直備おほなをび見直みなをし聞直ききなをしまして、たいらけくやすらけく令奉仕つかへまつらしめたまへとおそれおそれみもまうす。